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ハーモニーの歴史6 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第6回:響きの悪い音階は便利?

06_Tetrad
シの音を加えた4和音
シを半音下げた方が響きが良い
でも、綺麗な響きとは言えない?

3度のハーモニーを得てヨーロッパ音楽が花開きました。その多彩なハーモニーは、現代に受け継がれています。そして、さらに次のステップへ進みます。ただし、3度の次に狭い音程である2度へ進むのは、しばらく後です。3度のハーモニーは、今までのハーモニーとは異なり、音程を上に重ねていくことで進化をとげます。

前回、3度のハーモニーは、「ド、ミ、ソ」のように3音でハーモニーを作ることが出来ることを述べました。これを発展させると、さらに3度上に音を重ねていくことが考えられます。「ソ」の3度上の音は「シ」です。ただし、「シ」の音を重ねるとあまり良い響きがしません。使用する楽器の音色にもよりますが、若干にごったうつろいのある響きとなります。では、どうやって綺麗な響きを得るのでしょうか? 実際の演奏では、「シ」の音を半音下げてフラットになります。「シ」のひとつ下の黒鍵です。これで綺麗に響くでしょうか? 答えはYESともNOとも言えます。

3度の音を積み重ねていくことの理論的な説明は、「倍音」と言うものでなされます。「倍音」とは何でしょう。今、仮に何かの楽器で「ド」の音を1音だけ弾いたとします。この音は、音程、つまりある一定の音の周波数を持っています(例えば「ラ」の音はおよそ440Hzと決まっています)。ただし、電気的に合成したサイン波でない限り他の周波数の音も同時に出ます。ちょっと難しくなりますが、雑音でなく音程の取れた音の場合は、整数倍の周波数を持った音が多く含まれます。例えば、「ド」に対して2倍の音は1オクターブ上の「ド」、3倍の音は1オクターブ上の「ソ」となります。これをどんどん上に行くと、「ミ」や「フラットしたシ」が出てきます。これらの音が倍音です。つまり、3度の積み重ねによるハーモニーとは、自然に発生している倍音を強調したものとも言えます。

ところが、話は簡単ではありません。今日、われわれが使っている平均律と言う音階は、倍音から出てくる「ミ」や「ソ」や「フラットしたシ」とは微妙に音程が違います。よって綺麗に響きません。倍音に近い響きを得るためには、純正調などの古典的な音階を使わなければなりません。しかし、それらの音階は、特定のキー(調)では綺麗に響くものの、他のキーではより外れた音となり響きが悪くなります。よって、ピアノなどでは曲ごとにチューニングを変える必要があり実用的ではありません。その前に、曲の途中で転調があったら演奏できなくなってしまいます。

これらのずれはどの音程にもありますが、「シ」の音では顕著です。綺麗に響くのは「フラットしたシ」より僅かに高い音程です。よって、ピアノなどでは、「シ」にしても「フラットしたシ」にしてもさほど綺麗なハーモニーは得られないのです。

以上のことは、音程を自由に変えられる歌やバイオリンなどの楽器には当てはまりません。それらは平均律以外の中間の音を自由に出せるので、実際のアンサンブルでは、(熟練した演奏者の技によって)臨機応変に響く音を出しています。ロックでもギターなどはチョーキングと言う技で対応しています。多くの場合、オーケストラを始めとするアンサンブルに鍵盤楽器などの音程が固定された楽器が含まれないのはこのためです。


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MasamiNARUSE

勉強になりました。
by MasamiNARUSE (2017-09-19 23:27) 

ok-rock

>MasamiNARUSEさん
コメントありがとうございます。
by ok-rock (2017-09-20 21:17) 

saia

う~ん、すごい!\(^o^)/
オーケストラに普段はピアノが含まれないのは、楽器として大き過ぎて移動が大変だからだと勝手に思っていましたが、そういった訳があったとは!
平均律とひと口に言っても、単純なものではないのですね。
ハーモニーの歴史は奥が深くて興味深いです♪♪

by saia (2018-04-08 09:41) 

ok-rock

>saiaさん
コメントありがとうございます。
音階の話は、そもそも難しい音楽の理屈の中でもなかなか難しいです。自分もよく分からないです。
でも、ギターを弾いてると自然と微妙な音程の差が分かります。理屈より経験ですかね。
by ok-rock (2018-04-08 12:08) 

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