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ハーモニーの歴史8 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第8回:進化の果てに...

08_Pour les quartes
ドビュッシーの12のエチュードから
4度音程のために"
とても日本的な響きで始まるイントロ

前回までの説明した3度の音の積み重ねにより、ハーモニーの世界は発展を続けました。具体的な使い方は、巷に溢れている現在の曲で聴けますし、本屋さんには理論書もたくさんあります。つまり、現在、ポップス等で聞かれるコードは、19世紀のヨーロッパで確立されたものとそれほど変りません。その間、本家のヨーロッパのクラシックは、現代音楽と言うものへ移行しました。ハーモニーの世界では、印象派の時代、ドビッシーがその幕開けとなります。

ドビッシーは、旧来のヨーロッパ音楽にない手法を用いた作曲家です。彼は、日本の芸術、特に浮世絵から大きな影響を受けています。そのせいか、彼の曲の中では日本の雅楽などで聴かれるハーモニーをアレンジにしたものが聞かれます。日本古来のハーモニーには、特に理論はありませんが、4度間隔のハーモニーが多いのが特徴です。彼は、それをいくつか重ねることにより、独特のハーモニーを作り出しました。4度のハーモニーをずらして2つ重ねることによって、結果的に2度のハーモニーが生まれました。例えば、「ド、レ、ミ、ファ#」などです。そう、彼は長らく続いた3度のハーモニーからさらに一歩進み、その先にある2度のハーモニーを発見したのです。彼は、全音音階(ホールトーン・スケール)と言うすべてが長2度の音階も多用しましたが、ここからも必然的に2度のハーモニーが生まれます。

過去の歴史をたどれば3度から2度への移行は必然です。しかし、それを美しい曲の中で実現するのは「天才」のなせる技です。倍音と言う後ろ盾がある3度のハーモニーと異なり、2度のハーモニーはコードそのものは不協和なものばかりです。それらを綺麗に聞かせるのは、コードのみでは説明できない各声部の流れなどのアレンジの力によるところが大きいでしょう。

ただし、その後2度のハーモニーが反映を極めたとは言えません。少なくとも我々が普段聴く曲には見当たりません。そして、クラシックの世界でもすぐに次のステップへ行ってしまいました。2度の次に狭い音程は1度、つまりそれは、ハーモニーのない振り出しに戻ってしまいます。次のステップはない訳です。

現代音楽では決まった理論や規則はありません。あるのは作曲者のみが知る各個人の手法です。3度の積み重ねによる旧来のハーモニーに限らず個人が良しと思えばどのようなハーモニーを使っても良いのです。これは、大きな自由を得ると同時に混沌にも通じます。結局、徐々に音程を狭くすることによって進化してきたハーモニーの歴史は、飽和点を迎えて無秩序な世界になってしまったのです。

もっとも、そのような無秩序な世界が一般のポップスなどに反映されるのは、さらに何十年も後の話でしょう。過去の歴史を見ればい世間一般への普及までの時差は大きいのです。果たして未来の音楽はどうなるでしょうか?

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