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ハーモニーの歴史12 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第12回: 究極のポリフォニー(ポリフォニー編3)

12_Das Wohltemperirte Clavier 
J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集
第1巻 第1番 ハ長調からフーガ
鍵盤1台で奏でる4声のフーガ
順番に現れる主題を彩る多彩なハーモニーがとても美しい

カノンはポリフォニー音楽のかなめであり、各声部がバラバラになりがちなポリフォーニーに統一感を持たせる為の重要な形式だと言えます。そして、ポリフォニーを象徴するもう一つの形式、そして究極のポリフォニーが「フーガ」です。

フーガは各声部が同一のメロディーを演奏する点では、カノンと近いものがあります。通常の形式では、まず最初の声部が単独でメロディーを演奏します。カノンと異なり、たいていの場合は、数小節の短いメロディーで完結します。そして、最初の声部のメロディーが終わると同時に、2番目の声部が同じメロディーの演奏を始めます。ただし、ここでキー(調)は、5度上等に移調されます。その間、最初の声部も休むことなく演奏しますが、メロディーは自由に動きます。アドリブ的に多彩なメロディーを演奏しながら2番目のメロディーにハーモニーをつけることになります。

同じように、3番目、4番目の声部が入ってきます(声部の数は、曲により2~6ぐらいまであります)。各声部は、順番に同じメロディーを演奏しますがそれぞれキーが異なり、また、他の声部が演奏しているときは、全く異なるメロディーを演奏することになります。そして、全部の声部が終わると間奏が入ります。間奏は、複雑なハーモニー処理で最初の調(キー)から大きく逸脱した演奏をもとの調に戻るために必要となります。編曲としては、カノンの手法を用いたり即興演奏となったり、多彩かつ高度なものが多く聞かれます。その後、また、いづれかの声部が最初のメロディーを演奏して2順目の演奏が始まります。何順するかは、曲によりいろいろです。

カノンとの一番の違いは、各声部のメロディーが重ならない為、今どこの声部がメロディーを演奏しているか聞き取りやすいことです。また、各声部が自由に動けるため作曲的にも演奏的にも高度なものが求められます。同一のメロディーを用いながら、毎回異なるハーモニーの処理や転調等が行なわれます。

ポリフォニーとして高度な技法であるフーガですが、バッハをピークとして急速に消滅していきます。その後はベートーベンで少し聴かれるぐらいです。曲の進行において形式が厳格であるがゆえに、古臭くなってしまったのかもしれません。ただし、各声部で同じメロディーを繰り替えすと言う最小限の決まり事の中で、無限のハーモニーを即興的な演奏の中で生み出すフーガの技法は、究極のハーモニーと言う事が出来ます。

フーガに限らずポリフォニー音楽は、バロック時代が全盛期で、バッハをもって完成し同時に終焉を迎えました。ただし、形式としては過去のものとなりましたが、現代のホモホニーのハーモニーにおいても、各部分を見ていくとこれらの要素がたくさん見うけられます。ポリフォニーの基礎があって始めて、ホモホニーが理解できると言えます。

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