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宅録史6:給料で機材を買え [連載読み物]

自宅録音の黎明期を語る自分史の続きです。

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歌謡曲、クラシックと作曲経験を積み、その後、学生の特権「暇」を活用してロック、ポップスの歌物を12曲量産しました。MTRの使い方もこなれてきて、4トラックで5~6パートを重ねられるようになりました(ピンポン録音と言うテクニックを使います)。

そして、無事に卒業・就職して社会人になりました。と言うことは給料が入ると言うことに他なりません。さっそく、最初のボーナスでシンセサイザーを買いました。それを買えば、「どんな音」でも録音出来ると思ったからです。バイオリンでもベースでも何も、、、。

ところが、ちょっと甘かったです。当時、出たてのデジタルシンセはとても高価で、買えたのは、CASIO CZ-1000でした。発音数=4(音を悪くすれば一応8音も出ます)、強弱がつかない、エフェクターも入っていない、そして何よりも、全然本物の楽器と同じ音が出ませんでした。それが叶うのは、PCMシンセ(サンプリングされた波形が入っているシンセ)が世に出る3、4年後まで待たなければならなかったのです。

しかし高価な買い物ですし、元々、シンセが主役の音楽が好きだったこともあり、シンセの習熟に勤めました。CASIO CZ-1000は、操作が非常に分かりやすく、また、この頃になると、シンセの参考書等も出始めたので音作りはすぐに覚えました。しかし、困ったのは、そもそも鍵盤が弾けかったことです。

当時は鍵盤楽器を弾いたことはおろか触ったこともありませんでした(小学校の音楽室でちょっとは触ったかもしれません)。しかし、シーケンサーなんてない時代、MTRに録音する以上、細切れであっても実際に弾かなければなりません。ここから半年におよぶ苦悩の特訓が始まりました。今でも弾けるとは言えませんが、打ち込みに不自由がない程度には鍵盤がいじれるので、この時の努力は報われたと思います。

そして、社会人2年目となり、強制的な二人部屋の寮暮らしが終わり、自由なアパートでの一人暮らしになりました。徹夜でも何でもOKの生活が始まりました。さっそく、新しいドラムマシン(KORG DDD-5)、マルチ・エフェクター(Roland DEP-5、YAMAHA SPX90Ⅱ)と矢継ぎ早に買い、正真正銘のインスト物に挑戦しました。まだ、ギター・アンプ・シミュレーターは存在しませんでしたが、マルチ・エフェクターをトリッキーに使って、アンプもどきの音を編み出したこともきっかけとなりました。ハードに歪んだギターが録れるようになったのです。

宅録史_06

他の録音機材は変わってませんが、4トラックMTRとビデオ・デッキの音声トラックを行き来してダビングを重ね、もっと多くの楽器を重ねる技を独自に開発しました。これで、はじめてドラムマシンもステレオで録音出来るようになりました。シンセもなんとか弾いて、初期のハード・ロック・インストは4曲ほど完成しました(こちらこちらこちらこちら)。

しかし、この方法は、初期のウォークマンを使った録音と同じぐらいの労力を必要としたのです。機材を買えば買うほど録音に時間がかかるようになってきました。シンセも新しいドラムマシンもMIDI端子がついてました。その端子にシーケンサーという機械を繋げば自動演奏してくれると知りました。だが、それは何十万もしてまだまだ庶民には夢の世界。ひたすら録音しては間違え、やり直しては、また間違えを繰り返して、毎日、録音に励んでいたのです。

 今回の機材:CASIO CZ-1000、KORG DDD-5、Roland DEP-5、YAMAHA SPX90Ⅱ

 今回の教訓:社会人になると機材は買えるがそれを使う時間は少ない

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