SSブログ

宅録史1:家であるもので曲を録音しろ [連載読み物]

自宅録音の黎明期を語る自分史。前回は序章でしたが、今回からお話がスタートです。

 << 1回目のお話 | < 前回のお話 | | 次回のお話 >

高校卒業後にエレキを買い、まだまだ初心者ながらも2年目ぐらいからオリジナル曲の音源化(当時はカセットテープ)のチャレンジを始めました。演奏も作曲も完全に初心者でしたが、エレキの練習と同時進行で録音も始めました。

本当は歌物が作りたかったのですが、自分は歌が下手なので、まずはエレキを使ったインスト曲からスタートしました。しかし、前回、書いたように録音機材が買える時代ではなく、また今のように情報もなくプロがどのように録音しているかも分かりませんでした。完全な素人です。

作曲と言っても、プロのような完成度は無理だとは分かっていたので、伴奏にメロディーを重ねれば良しとしました。ただし、両方共にギターで弾くとしたら、2人で合わせて同時に弾くか、1人で2回録音して重ねなければなりません(多重録音と言います)。まだ、ギターの初心者だったので、上手な友達に頼んでも合わせて弾くのは無理なので自分一人でやることにしました。

まずは、身の回りにある物で何とかならないか考えて、次の物が出てきました。いずれも安物です。

◇エレキギター
 持っている楽器はこれだけです。今だにメイン使っているストラトです。
◇ギターアンプ
 リバーブとかは何も付いていない小型のトランジスタ・アンプです。
◇オーディオ・セット
 音楽を聴くのが趣味だったので、中学生の頃に親に買ってもらいました。レコードプレーヤー、ラジオ、カセットデッキ、アンプ、スピーカーのセットです。ここでは、レコードプレーヤー以外をすべて使います。
◇ウォークマン
 再生専用のカセットプレイヤーです。片道2時間の電車通学なので必需品でした。
◇ワイヤレスマイク 
   小学生の頃、アニメの主題歌をTVから録音するために親に買ってもらいました。

これで多重録音が可能になったのはマイクに秘密があります。この安物マイクは、出力をケーブルでもFM電波でも出せるようになってました。そして、本来は出力用のプラグに音を入れると、同時に録っている音とミックスされて、FM電波に飛ぶようになってました。多重録音の肝であるミキサーの代わりになるのです。録音は次のようにやります。

1.ギターアンプの前にマイクを立てて、オーディオ・セットのカセット・デッキで伴奏を録音する。
2.録音したテープをウォークマンへ入れる。ウォークマンの出力はケーブルでマイクへ接続。
3.FMラジオを録音出来るようにして、新しいテープでカセット・デッキを録音スタート。
4.ウォークマンで伴奏を再生スタート。伴奏を聞きながらメロディーを弾く。
5.伴奏とメロディーが混ざったものがカセット・デッキに録音される。

宅録史_01

これをもう一回繰り返して、伴奏、ベース的な低音、メロディーの3パートを重ねることが多かったです。しかし、気が遠くなるような努力を必要としました。何故かというと・・・

・演奏の途中で止められない。毎回、絶対に間違わないで全部弾かなければならない。
・メトロノームもクリックも使えないのでタイミングが取れない。途中にリズムのはっきりしない伴奏や長い休符があるとタイミングをミスる。
・機材が機材なので雑音がひどい。3回目には雑音に埋もれて何だかわからなくなる。
・重ねる音のバランスはギターアンプの音量で合わせるしかない。試行錯誤でやってみないとバランスが決まらない。

などなど。いずれにしてもエレキギターを買って1年ちょっとでは「間違えずに弾く」ことが困難なので、数十回録音してまぐれで出来るのを待つしかありませんでした。

この録音方法で途方もない労力をかけ10曲が完成しました。しかし、これで出来ることは知れてます。今聞くと「ただコードを弾いているだけ。本当に曲か?」と思います。しかしながら、努力の甲斐もあり作曲の技量は上がっていきました。この方法で最後に作った曲は、後日、アレンジし直して1stアルバムに入れた"Seaside of Twilight"です。

 今回の機材:オーディオ・セット、ウォークマン、ワイヤレスマイク

 今回の一言:機材がなくても曲は作れる

nice!(17)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽