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ハーモニーの歴史9 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 

第9回:西洋へ持ちこまれたもの

09_Blues code
ブルースのコード進行
CやFが7thとなっていたり
G→Fの禁則の進行が使われている
このシンプルな12小節で多くの名曲が作られる

長い間反映してきた西洋のハーモニーの世界は、最少の音程(2度)にたどり着き終局を迎えました。その後のクラシックの世界では、現代音楽と名を変えて法則のない世界が続いています。また、我々が聞くポップス等は、クラシックに100年ぐらい遅れて同じ歴史の歩み(崩壊への歩み?)をたどっています。それらは、おおよそはクラシックのコピーの世界ですが、異なる面もあります。今回は、それらを説明しましょう。

現代の一般的なポップスでは、アメリカの黒人社会から発生したブルースとそれから発展したジャズ、ロックの影響が多大です。リズムが特に影響を受けましたが、ハーモニーの世界にもそれは言えます。ブルースのコードの一番大きな特色は、7thコードを多用すると言う事につきます。逆に、コードそのものは、スリー・コードと言われる三種類が主に使われます。それらは、クラシックの世界では、もっとも基本的な3つで、トニック、サブドミナント、ドミナントと言われるものです。キーをCとするとC7、F7、G7になります。

通常、これらの3つだけのコードを使って曲を作ると、童謡のようにシンプル(悪く言えばワンパターン)な響きになってしまいます。ただし、ブルースではコードがすべて7thになっているためにちょっと事情が異なります。7thに変化した音は、本来の長調のスケールから外れて短調のスケール音を付加します。さらに、それらの音は平均律から外れた微妙な音程で演奏されます。よって、曲調が長調でも短調でもないものになります。これらの音は、ブルー・ノートと呼ばれ、ブルースを決定付けるものなのです。

これらのブルー・ノートは、ブルースの憂鬱で重たい雰囲気を導き出したわけですが、ブルースがジャズ、ロックンロール、ハード・ロックなどなど変化して行くなかで、疾走感と重量感、都会的と泥臭ささなど、同じコードから相反するさまざまな雰囲気をも作り出していきます。そのすべてが、ブルースに根付いているがゆえに、旧来の西洋音楽のハーモニーとは異なる響きを作り出しているわけです。多彩な響きを得る為に複雑化していき、最後に飽和してしまった西洋のハーモニーと比較すると、ブルースは最少の理論で多彩なハーモニーを作り出します。これは、音楽以外においても西洋文明と(日本を含めた)それ以外を比較するときに、多く見られる対比でしょう。

また、ブルース以降、特にロックのハーモニーにおいては、クラシックの3度のハーモニーにおいて禁則となっているものが多く使われています。例えば、3度音を抜いたコード(パワー・コード)、ベースとトップノートのオクターブ平行進行(ベースとエレキのユニゾンのリフ)、ドミナントからサブドミナント(G→F)へのコード進行などです。これらは、ロックであっても時と場合によってはハーモニーを空虚にしてしまう危険がありますが、多くの場合はなくてはならない響きです。理論よりもセンス、そして自由なハーモニーこそがロックかもしれません。

現代までたどり着きましたが連載はまだ続きます。次からはテーマを絞って解説する予定です。

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