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ハーモニーの歴史10 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第10回:コードにはないもの(ポリフォニー編1)

10_Suiten Ⅲ Air
J.S.バッハの管弦楽組曲から第3番のアリア
G線上のアリアとして有名
4つの異なるメロディーが重なり
コードでは表せない美しいハーモニーを作る

しばらくの間、話を簡略化するためにコードの話が続きました。今回は、基本に戻ってハーモニーのお話です。記号化できるコードと違って、ハーモニーそのものは、楽譜を見ながら音を聞かなければ理解が難しいものです。よって、文字で説明するとどうしても抽象的になってしまいますのでご了承下さい。

ハーモニーそのものには、各声部のメロディーの流れや、楽器(あるいは声)などの音質の対比、演奏上の表現、楽器の数など多くの要素が絡んでくる事を最初に説明しました。その中で、もっとも基本となるのは、各声部のメロディーの流れでしょう。

通常、ギターやピアノなどで一人でコードを弾くと、弾いている音はすべてコードの構成音です。大方の場合、それぞれのコードは、弦や鍵盤の押さえ方の「型」があり、それらを複数つなげていくことによって演奏が成り立ちます。よって、ある程度決まったパターンでの演奏となると同時に、そこにコードの構成音以外の不協和音は存在しません。それらのコードとコードのつながりは、コード進行としてのつながりはありますが、コードを構成しているそれぞれの音、つまり各声部の滑らかなつながりはありません。

逆に、コーラスや弦楽曲などでは、各声部(コーラスでは、ソプラノ、アルト、テノール、バスです)は、それぞれ独立したメロディーを歌っています。メインのメロディー(主旋律)は、一番上のパート(ソプラノ)ですが、他のパートもただコードの構成音のみを歌っているわけではなく、独自に滑らかなメロディーを歌っています。通常、聴衆には聞き取れないかもしれませんが、それらのメロディーは、ハーモニーを形作る上で重要な働きをします。そして、時にはメインのメロディーの隙間を縫って、新たなメロディーを聞かせて自己主張する場合もあります。

ここで重要なのは、各声部が主旋律と平行に動いているわけではなく、異なるメロディーを奏でていることです。例えば、主旋律の音程が上に行ったら他の声部は下へ行く、主旋律が音を伸ばしているところで他の声部は細かい動きで音程を変えるなどです。各声部間の音程とリズムの関係が常に動いているわけです。結果として、そこにはコード以外の多く音、つまり不協和音が入ってきます。コードと言う概念のみだと、「1小節の間ずっと同じコード」と考える場合も、ハーモニーとして考えると、「どこかの声部の音程が変る毎に細かくコードが変る」と考えます。これにより、単純にピアノやギターでコードをリズムにのせて演奏する場合と異なり、緊張感のある多彩な響きが生まれるわけです。

これらの不協和音は協和な音程の間に経過的に生まれるものです。通常、リズムの強拍では協和に、弱拍では不協和になるようにハーモニーをつけます。テンション・コードのように常に含まれるものではありません。逆に言うと、ハーモニーの協和、不協和の繰り返しによってリズムが形作られます。明確なリズム楽器を持たないオーケストラなどがダイナミックなリズムを奏でる事が出来る理由は、ハーモニーにもあるのです。

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