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ハーモニーの歴史14 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第14回:多彩な響き?ワンパターン?(テンション編2)

14_Liebestraum
リストのピアノ曲、愛の夢 第3番
テンション・コードの美しくモダンな響き
定石的なセカンダリー・ドミナント・モーション
いわゆる、Ⅱ-Ⅴによる進行が聞かれます

不協和音的に単発でテンション・コードを使いインパクトを得ることは、テンション・コードの概念が生まれる以前から聞かれます。しかし、それを複数つなげて、かつ、綺麗に響かせるのは難しい事です。変化和音とは異なる、そのような、機能的なテンション・コードの使い方は、19世紀も半ばになってから生まれました。今でも、ジャズやそれに影響を受けた音楽では、多くのテンション・コードの連結が聞かれます。それは、どのような仕組みになっているのでしょうか。

以前、テンション・コードは、7thコードと同類だと言う事を説明しました。通常のテンション・コードは、必ず、7th音を含むとともに、コード進行では7thコードと同じ機能を持っている訳です。その機能とはドミナント7thと呼ばれる「ソ、シ、レ、ファ」の7thコードが、トニックと呼ばれる「ド、ミ、ソ」へ進む力、つまり、ドミナント・モーションと呼ばれるコード進行の推進力です。

これにより、テンション・コードは7thコードと同様に、強力なコードの推進力を持っているわけですが、それをつなげて行こうとすると、困った問題が現れます。つまり、ドミナント7thのコードの次は、必ずトニックあるいはそれと同機能の「落ち着いたコード」に進みます。つまり、テンションのないコードに進もうとしてしまうわけです。テンション・コードを複数つなげていくのが難しいのは、これが主な理由です。

そこで、これを回避する技が、一つあります。それは、次から次とドミナント・モーションが来るように、コード進行にある錯覚を入れ込むことです。例えば、「ソ、シ、レ、ファ」の前に「レ、ファ#、ラ、ド」を置きます。この二つは、調(キー)がト長調(Gメジャー)だとすると、単にト長調のドミナント・モーションと解釈できます。つまり、ドミナント・モーションを一時的に他の調へ当てはめることにより、順次、ドミナント・モーションをつなげることが出来ます。これは、セカンダリー・ドミナント・モーションと呼ばれるテクニックです。

セカンダリー・ドミナント・モーションを多用すると、ドミナント・モーションの連続、つまりは7thやテンション・コードの連続を使うことが出来ます。ただし、それによる危険もたくさんあります。例えば、上記の例のように、本来の音階から外れたシャープやフラットがついた音がたくさん出てきます。これにより、メロディーとの兼ね合いが難しくなります。歌ものであれば、音程が取りづらくなります。ただ、これは、演奏の技量により何とかなるものではあります。

そして、もう一つは、コード進行そのもののバリエーションです。セカンダリー・ドミナント・モーションは、ある意味、ワン・パターンです。いわゆる「Ⅱ-Ⅴ(ツー・ファイブ)」と呼ばれるコード進行の繰り返しです。実際の曲では、いろいろなコードの置き換えが行なわれるとは言うものの、定型的な感じはいなめません。つまり、テンション・コードにより個々のコードは複雑になるものの、コードの進行は簡素になります。一時的にいろいろな調への移り変わりはあるにせよ、ドミナント・モーションと言う土台から逃れなれなくなるのです。このワンパターン化は、ジャズなどの即興演奏が主となる曲では、良いのかもしれませんが、作曲としては、型にはまったものになりやすく、テンション・コードの落とし穴と言えます。

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