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作曲→小説→アレンジ [雑感]

先月、作曲のイメージをつかむために短歌や小説を書いたことを記事にしました(こちら)。今回はその続編です。
 
前回、作曲の過程を紹介した"Blue in the dark"ですが、4th アルバムの製作時だったため、メモ程度の譜面に書き出した後、他の曲の作曲を続けました。20曲ほど作曲した後にアレンジと録音の作業を始めたため、この曲のアレンジを始めたのは作曲の半年後でした。

アレンジをするために半年ぶりにメモの譜面でギターやシンセを弾いてアレンジを考えようとしている時に、ふと物語が頭の中に浮かびました。そこでアレンジは後回しにして、また短い小説を書きました。続編の小説ですが、設定は異なります。また、ちょっと長くなりますが全文を掲載します。
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  "ブルースニーカー"

 「新しいスニーカーだね」
 自分に話しかけられているとは思わなかった。後ろから声をかけられたことに、ちょっと間をおいてから気が付く。振り向くとそこには学生服の彼が立っていた。とっさに返事が思い浮かばないまま、彼の顔を凝視してしまった。

 今朝、週末に買った新しいスニーカーを履いて高校へ行こうと思ったのは、ちょっとした気まぐれ。明るいブルーのデザインがちょっと派手かなと思ったけれど、まあカラフルな蛍光色のスニーカーを履いてくる派手目なグループの女の子たちに比べればごく普通。先生に目をつけられることもないとは思った。でも、買った時は学校に履いていこうとは思ってなかったので家を出る時のちょっとした気まぐれだと思う。

 彼の顔を見たまま、何か言わなくちゃとやっと頭が回り始める。
 「うん、日曜に買ったばかりなんだ」と応えてからなんだかつまらないことを言っている自分に気が付く。話を切り上げて歩き始めようかとも思うけど、状況が呑み込めなくて言葉がでてこない。彼とは半年前から同じクラスだけど二人で話した記憶がない。特に接点もなかったし、お互いクラスの中では地味な方でクラスの全員と会話をしているわけでもない。
 とか考えているうちに彼の顔を見続けている自分に気が付く。慌てて目をそらしたけど、他に見る物もなくて視線がさまよう。ちょっと挙動不審?
 「やっぱり、新しいんだ」
 彼が応える。やっと頭が回り始める。当然だけど、私が新しいスニーカーを履いてきたことなんか彼が知っているわけもなく、当てずっぽうで言ったのだと気が付く。それにしても何で新しいと気が付いたんだろう。それより、何で今朝に限って声をかけてきたのだろう。

 彼が私を追い越して学校に向かって歩き始めた。廻りに同じ制服が何人か見えるので、ちょっとマズイかなとも思ったけど、会話が途中な気もするので彼の横に並んで自分も歩き始める。疑問を投げかけてみる。
 「何で新しいって分かったの?」
 少し考えた様子で前を向いたまま彼が応える。
 「うん、初めて見た気がしたから」
 何となく答えになっていない気もする。今まで私の靴を観察していた? て言うか何で私の事を見ていたのだろう? いつから? 頭の中がグルグルしてくる。横にいる彼の顔を見る。何事もなかったように涼しげな顔をして遥か先を見て歩いている。あらためて彼の顔を見るとなんかざわざわしてきた。特別、カッコ良くもないけど悪くもない。でも、普通でもないかも? 

 突然、彼が鞄を持ち替えながらこっちを見る。目が合って動揺したのは彼の方だった。涼しげな顔が崩れて急にそわそわした感じになった。つられて私も視線を外して下を向く。彼のスニーカーが目に入った。もちろん、新品じゃなくて、どちらかと言うとくたびれたグレーのスニーカーだった。スニーカーに書かれている大きなロゴが目に入る。私が履いているのと同じだった。
 「スニーカー、同じメーカーだね」
 「うん」すぐに彼が返事をする。
 分かってたみたい。もちろん彼に合わせて買ったわけじゃないし、名の知れたメーカーなので偶然って程の事でもない。なのに、急に恥ずかしくなってきた。デザインが違うのでお揃いってわけでもないのに。
ちらっと彼を盗み見る。何となく彼もちょっと赤い顔をしているかもしれない。会話は進みそうにもないけど、もうすぐ学校に着くのにここでサヨナラってのも変かな?

 偶然なのか理由があるかは分からないけれど、彼が声をかけてくれたのは事実だし今度は私の番かな?
 「ねえ、帰りも一緒に帰ろうよ」
 と言って目の前の校門に向かって走る。校門を通り抜けてから振り返って彼を見る。笑顔だったのでOKかな? とりあえず、教室まで全速力しかないね。真っ赤な顔を見られるわけにはいかないから。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - Copyright 2012 Katsumi Ochiai 
 
Blue sneakers 
 
前回の小説とは、男女の役回りが逆ですし雰囲気も随分違いますね。でも、自分的には、登場人物の男の子の心情が曲のテーマと合ってます。この後、曲のアレンジ作業に入った訳ですが、少しハードロックぽいアレンジになったのは、こちらの小説の男の子のイメージに影響されたのかもしれません。 
 
と言うことで、小説と作曲のコラボ(と言っても、どちらも自分作ですが)のお話でした。また、再アップですが、曲はこちらです。

 
Copyright 2014 Katsumi Ochiai 

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コメント 4

rimix

以前から何かこう、もやもやしてたのですが、今回の記事で、それが判りました。(物語は読んでませんが…苦手なんです。(^^ゞ)
ドラマのワンシーンに使用されてもおかしくないと言う事でした。
エレキギターのフレーズは、高校生の男女どちらでもよいのですが、希望の様なものを走って追いかけるイメージがあったんですよ、青春ってやつですか…
そうそう、物語に合う音楽だな~と。
物語をイメージして制作されたのでしょうか?
by rimix (2016-04-03 10:22) 

ok-rock

>rimixさん
コメントありがとうございます。
なるほど物語にあいますか。サントラみたいな感じですかね。
自分は漠然とした思いを曲にすることが多く、この曲もそうです。なので、具体的なストーリーはありません。一つの思いから物語や曲が派生してできたと言った方が良いかもしません。
その思い(=テーマ)が何かは抽象的で説明が難しいですね。

by ok-rock (2016-04-03 19:50) 

saia

今回の短編小説も、青春!っていう感じで爽やかでとてもいいですねー♪(੭ु ´▽`)੭ु⁾⁾
この後このふたりはどうなって行くのかな、って思ってしまいました!
これを読むと、前回と同じ曲なのにちょっと違って聴こえてくるので不思議です。
それにしても、小説を書いてそこからアレンジ・・・またしてもすごいなあ!
ok-rockさんはマルチアーティストですねヾ(≧▽≦)ノ

by saia (2016-04-03 22:52) 

ok-rock

>saiaさん
読んでいただいてありがとうございます。
前回はクールな設定だったので、今回はかなりベタな設定で書きました。まさに青春ですね。
メロディーは形のない物なので、作る時は頭の中でいろいろ渦巻いてしまいます。逆に、書くことは頭をすっきりできるので好きです。
自分はマルチアーティストっていうほどカッコ良いことはしてないです。ただの芸術かぶれのおじさんです(笑)
by ok-rock (2016-04-04 00:05) 

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