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ハーモニーの歴史11 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

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第11回:みんなで重ねれば(ポリフォニー編2)

11_Musical offering No3 canon
J.S.バッハの音楽の捧げ物から逆行カノン
(原譜はソプラノ記号だがト音記号で記譜)
楽譜は1声だが実際は2声のカノン
最後にある逆さまになったト音記号がミソ
もう一人は楽譜を上下逆に読んで曲の最後から逆行して演奏する

前回は、コーラスなどの各声部の流れからコードでは説明できないハーモニーの多彩さを説明しました。例えば、コード進行で表現すれば単純なストリングスの演奏でも、実際にクラシック等で聞かれる演奏は多彩な響きを持っています。逆に、いくら綺麗なストリングスの音色を使っても、シンセサイザーの鍵盤でコードをなぞっていくだけでは、これらのまねはできません。そして、さらに各声部のメロディーを突き詰めていくとポリフォニーを避けて通れなくなります。

以前、説明したように、ポリフォニーは各声部が別々のメロディーを歌いかつ全体としてハーモニーとしての調和も取れた形式を言います。現代の音楽では完全なポリフォニーの曲を作ることはまれで、部分的な味付けとなる場合が多いでしょう。しかし、概念を説明するために、完全なポリフォニーの曲の形式を説明しましょう。

ポリフォニーの形式はたくさんあります。形式に捕らわれずに1曲を通して各声部がまったく違うメロディーを歌うことも出来ますが、それでは規則も何もなく説明しようありませんし、聴く立場からみても、それぞれのメロディーを聞き取る事は不可能です。そこで、もっとも一般的な「カノン」形式を説明しましょう。

カノンの基本は、同じメロディーを各声部がワンテンポずらして歌うことです。簡単な例では、「かえるの歌」はカノンそのものです。各声部が、何小節かづつずれて同じメロディーを歌い出すと、それがきれいなハーモニーになるように、あらかじめメロディーに細工がしてあるわけです。どの声部も主役でありながら相手にハーモニーをつけてあげるわけです。ソプラノが主役でそれ以外は脇役であるホモホニーとは異なり、主従関係のないハーモニーの世界です。

「かえるの歌」は単純な例ですが、実際にもっと複雑で長いメロディーになってくると、とたんに作曲が難しくなってきます。すべてが同じメロディーを歌っているわけですから、不協和音を除く為に一つの声部のメロディーを変えると、他のすべてのメロディーも変り、また別の箇所で不協和音が発生します。あちらを立てればこちらが立たずです。そこで、ある声部の一部だけメロディーを変えてしまって処理することも出来ますが、これは各声部に主従関係が生まれてしまいます。逆に、すべての声部が完全に同じメロディーとなっている曲は、「厳格」なカノンとされ、ある意味、数学的な精巧さがあります。そして、なによりすべての声部が主役で演奏が楽しい曲になります。

カノンには、さらに多くの種類があります。最初のメロディーをそのままなぞるのではなく、逆から演奏するもの(2番目の声部は、最初の声部のメロディーを楽譜の後ろから演奏する)、音程が逆になっているもの(音符を上下逆にする)、音程が異なるもの(音符を上下に平行移動)テンポが倍になったり半分になるものなどなどです。一見、遊びのような手法ですが、各声部の音程やテンポが異なるのでハーモニーも刻々と変り、作曲には高度なテクニックが求められます。これらの手法で「厳格」なカノンを作るのは至難の技でしょう。

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