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宅録史:序章 [連載読み物]

今回から新連載です。自分は昔々から作曲した曲をテープやCD等の音源に仕上げる作業をしています。いわゆる自宅録音(通称:宅録)です。今ではPCと録音用のアプリが一つあればすべてが簡単に出来てしまいますが、当時、そこに辿り着くまでは苦難の歴史でした。おじさんの昔話になってしまいますが、その初期の歴史を書いてみます。今回は、今とはあまりにも違う当時(1980年代初頭)の時代背景です。

宅録史_序章

以前も書きましたが、高校生の時に作曲をしたいと思い、受験が終わった春休みにエレキを買いました。今なら曲を作りたかったら、まずはPCを買って録音用のアプリの習得になると思いますが、当時はPCどころか打ち込みもない時代なので、曲を作るためには何年もかけて楽器を習得するしか道はなかったのです。作曲をするためにはギターより鍵盤の方が良いのは分かってましたが、まだ安価な電子キーボードも存在せず、高価なピアノやエレクトーンを買える経済状況ではありませんでした。選択肢はなく、¥36,000のエレキを買うことから始まりました。

当時はまだアナログ・レコードの時代でした。アマチュアがレコードを作ることは金銭的に難しく、オリジナル曲を配布する媒体はカセット・テープしかありませんでした。また、録音のためのマルチ・トラック・レコーダー(MTR)、ミキサー、エフェクターも主流はプロ用のアナログ機器で何百万円以上もする物ばかりで、それらを買うことは不可能でした。

そんな時代だったので、アマチュアがそれなりのクオリティーでオリジナル曲を音源にするためには、録音設備があるスタジオでバンドの演奏を録ってもらい、カセット・テープの完成品まで仕上げてもらうしかありませんでした。プロ用の機材も高価な時代だったので、頼むと1~2曲でも10万円以上はかかったと思います。自力でやろうとしたら練習スタジオにラジカセを持ちこんで一発録りしかありませんでした。現在のようにデジタル録音ではないのでとても音質が悪く、ボーカルが聴き取れるかも怪しい音ですが、多くのアマチュアのデモテープは、それが普通でした。

自宅での録音は、オープンリールのテープを用いたアナログのMTRはありましたが、こちらも100万円以上はしましたし、ミキサーやエフェクターも揃えることを考えると自宅で機材を揃えることは不可能でした。なので、自宅で一人でやろうとすると、ラジカセでのギターの弾き語りの一発録りぐらいしかありません。

このような状況でしたが、MTRやミキサーなど、いずれも100万円の壁を切り始めて、徐々に自宅録音が見えてきた時代でもありました。とは言うものの一般庶民の大学1年生の自分に、そのような機材を買えるわけもなく、でも作りたいという情熱(欲望)は抑えきれず、無い知恵を絞って曲作りを始めることになります。

では、次回からそのお話が始まります。

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目次
宅録史1:家であるもので曲を録音しろ
宅録史2:ドラムの法則をさがせ
宅録史3:何度でもやり直せ
宅録史4:アイドルをさがせ
宅録史5:複雑なものから法則を探せ
宅録史6:給料で機材を買え
宅録史7:すべて機械にやらせろ

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